お客様を隣の喫茶店へと案内。

佐藤は、一人のお客様も失いたくないという考えのもと、必死に働いた。それを物語るエピソードが「炉辺」時代にある。

 満席の店内、また新しいお客様がやってくる。普通だったら、「申し訳ありません、ただいまお席がいっぱいなんです」で終ってしまうところだが、彼は違っていた。

 「お待ちください、今、空きますから。当店の待合室へどうぞ」といって、なんとそのお客様を隣の喫茶店へと案内したのである。

 もちろんコーヒー代はこちら持ち、席が空きしだいお迎えにあがる。暑い中、または寒い中、お客様に待っていただくのは申し訳ない、その思いから生まれたアイデアで、彼は着実にお客様の心をつかんでいった。その心意気が、現在の彼をつくりあげているといえるだろう。