あなたは、一度人を嫌いになったらなかなか許せない人だ。

昭和55年38歳のとき、佐藤は繁盛していた「にこらしか」をたたみ、「株式会社大庄」に入社する。「大庄」は、「庄や」「やるき茶屋」など様々な業態の外食チェーンを展開する業界の雄である。「大庄」に入社したのは、お客様に喜んでもらえる店づくりのノウハウを吸収するためであった。「大庄」では、埼玉の町に自分の店をつくるための効率的な運営方法や、フランチャイズの仕組みなどはもちろんのこと、それ以上の多くのことを学んだ。

佐藤曰く、「大庄」で学んだ中で一番自分にとって大切だったこと、自分を変えるきっかけとなったことは「人を許すこと」を覚えたことだという。それまでの彼は、どちらかといえば、人と一緒に仕事をすることが苦手な性格であった。そんな彼が、独立して最初の店を持つとき、株式会社大庄の平辰社長(当時)にいわれた一言が、今でも忘れられない。「あなたは、一度人を嫌いになったらなかなか許せない人だ。でも、一人では店はできないんですよ」

そのとき、彼は目が覚めた。人を雇うということは、そういうことなんだ。なんでも一人でできるわけではない。雇用関係は信頼関係だ。今まで自分に欠けていたのは、その寛大さだったのだと。店を大きくできるのは人材がいてこそだ。それに気づいた彼は、そのときまさしく経営者としての資質に目覚めたといえる。